【2025年7月から】はじまる新しい『経営・管理ビザ更新審査』

2025年7月17日から、経営・管理ビザ(在留資格「経営・管理」)の更新審査において、新たな運用が始まります。
特に注目すべき点は、「任意様式」による提出が可能となった一方で、納税や経済活動の実体に対する審査が強化されたことです。

この変更は、形だけの法人・活動実体の伴わない経営活動に対し、在留の更新を認めない方向へと舵を切ったものとも言えます。


「任意様式」ってなに?自由ってこと?

入管庁は、今回の更新手続において「任意様式」での提出を可能としました。
つまり、これまでのような定型フォームではなく、自社で作成した説明資料でも受け付けるという柔軟な制度に見えます。

しかし、ここで誤解してはならないのが、“何でもよい”というわけではない点です。
入管のスタンスは明確で、提出された資料が「納税面」や「事業の経済的実態」について合理的な説明を含むことが前提とされています。


入管は「実体があるか」を見る

更新審査で最も重視されるのは、次の2点です。

 👉過去1年間における事業活動の実績(売上・経費・利益など)

 👉それに基づく納税の履歴(法人税・消費税・個人所得税など)

特に近年は、活動実態の少ない法人に対し、ヒアリングや追加資料の提出を求める傾向が強まっています。

法人が黒字かどうかに限らず、

 👉きちんと売上を得ているか

 👉その収入に応じた納税が行われているか

 👉代表者や従業員に対して適切な給与支払いがなされているか

といった「経営の実在性」が総合的に審査されるのです。


新運用に至った背景とは?

今回の運用変更の背景には、ここ数年で見られる「実体の乏しい経営管理ビザの取得・更新」への懸念が強く影響しています。
実際、形式的に会社を設立し、必要最低限の書類を整えて在留資格を取得したものの、

・実際にはほとんど営業活動が行われていない
・納税実績がない、あるいは極端に少ない
・代表者が日本に居住しておらず実質的な経営関与が確認できない

といったケースが散見され、制度の趣旨を逸脱した運用が行われているという指摘が増えてきました。

また、これまでの「標準様式(決算書等)」のみに頼った審査では、各申請者の多様なビジネス形態に柔軟に対応しきれない一方で、形式を整えただけの“見せかけの経営”にも更新を認めざるを得ないという限界がありました。

こうした事情を踏まえ、出入国在留管理庁では、2025年7月より
「任意様式」の導入によって説明手段に柔軟性を持たせつつ、審査の実質性をより重視するという新たな運用方針に舵を切ったといえます。

これは裏を返せば、「書類の整合性」や「納税・収益などの客観的な実績」に裏付けされた説明をしなければ、たとえ申請書の形式が整っていても、更新は認められにくくなることを意味しています。


よくある誤解と実務対応

弊所にも、「経営管理ビザって簡単に取れるんでしょ?」というスタンスで相談に来られる外国人の方が少なくありません。

なぜそのような誤解が生まれるのか、背景をたどると、

「知人が簡単に取れたと聞いた」
「紹介してくれた士業の先生が『すぐに取れる』と言っていた」

という口コミや一昔前の情報に基づいているといったケースが大半です。

しかし、そういった誤解に対して私たちが常に説明しているのは次のことです。

「入国時の“在留資格認定証明書交付申請”では、たしかに取得できるかもしれません。
でもそのビザが本当に“継続できる”かどうかは、次の更新審査で決まります。
経営の実態が不十分なまま1年が経ち、更新が認められなければ、
日本でのビジネスはその時点で止まってしまうかもしれません。
それでも本当に“簡単に取れる”と言えますか?」

だからこそ、更新時に整合性の取れた資料を提出できるよう、最初から計画的に準備を進めておくことが重要です。
弊所では、ビザ取得後の1年間を通じて、月次の動向や経費、納税準備などを意識して整備できるようサポートを行っています。


行政書士として現場で感じること

私たちが実務の中で特に強く感じるのは、
「形式的に会社が存在するだけでは、更新は認められない」という審査方針の明確化です。
例えば、個人で不動産を購入し、日本で会社を設立して「経営・管理」ビザを取得した外国人の方の中には、

「売上はまだ少ないが、オフィスも構え、人も雇い、事業を着実に育てている」

という誠実に努力を重ねているケースも多くあります。
そして私たちは、そうした方々が更新審査を無事に通過し、継続的に日本で事業を営んでいけるよう、法的・実務的な支援に取り組んでいます。
ただし、「活動の少ない事業」については、近年ますます厳格な審査が行われるようになっており、入管からヒアリングや追加資料の提出を求められる場面も増えています。
とはいえ、これは決して「外国人経営者の参入を阻む」動きではありません。

むしろ私たちは、やる気のある優秀な海外の社長が日本に来ることで、日本のビジネス環境が刺激され、経済が活性化するという好循環を目指すべきだと考えています。
実際、日本での起業について、設立プロセスや税務・法務の制度、在留資格の審査基準を真剣に学び、準備を進めている外国籍の経営者の方は多くいらっしゃいます。
なかには、「自国でのビジネス経験を活かし、次の挑戦の舞台として日本を選んだ」という方も少なくありません。
こうした明確なビジョンと実行力を持つ経営者にとっては、今回導入された「任意様式」による更新審査の仕組みは、かえってビジネスの計画性を高め、先の見通しを立てやすくする意味で、歓迎すべき制度変更であるといえるでしょう。

こうした方々が更新を通過できるようにするためにも、私たち行政書士が

 👉経済的動向を明確に説明する資料

 👉納税や会計面での正確な記録

 👉現在までの事業活動と将来の見通し

わかりやすく丁寧に整理し、書面化していくことがますます求められています。


まとめ:柔軟さの裏にある「実体重視」の波

今回の制度変更は、「任意様式」という一見やさしそうな顔をしながらも、
中身は「経営の実体がある人だけを残す」ための本気のふるいがけです。

更新申請を控えている方、または新規で経営・管理ビザを取得された方も、
「これまでなんとかなっていたから大丈夫」と油断せず、今のうちから事業の根拠を整えておくことが必要です。

当事務所では、こうした新制度への対応を見越した書類作成・相談対応を行っております。
海外在住の方でも、ZoomやWhatsApp、メールなどを活用したオンライン相談が可能ですので、時差や移動のご心配なくご相談いただけます。

これからの新しい経営・管理ビザに疑問や不安のある方は、ぜひお早めにご連絡ください。状況に応じた準備をご提案いたします。


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👨‍💼 行政書士 須田充(愛知県行政書士会所属)